ゲリラ撮影なのか街角の通行人たちの表情がめちゃくちゃ自然。全編を通して、カメラも手持ちのようで、ライティングも少なく、生々しい映像でドキュメンタリーのようだった。
チェコの移民の貧乏な彼女のキャラクターがよかった。イタズラっぽい表情をしながらチョコチョコとかわいらしい仕草をするが、大事なバイクの運転の仕方を教えろと迫ったり、スタジオレンタル料を豪快に値切ったり、意外性がある。ピアノが上手っていうのもいい。掃除機をペットみたいに連れて歩くシーンもニヤッとさせられる。母親と小さな娘ちゃんと住んでる部屋に近所の男たちがテレビを観にゾロゾロ入ってくるのはすごかったなぁ、仲がいいんだろうけど。
ストリートミュージシャンの男性はボディに穴の空いたアコギで、思い切り切ない感情を乗せて歌い上げる。作詞作曲の才能もあり、成功を予感させる。すごいイケメンというわけでもなくこれもリアリティ。実際プロらしく歌もギターも上手で、説得力があった。
家電などの修理屋をやってる彼のお父さんも、厳しそうに見えて肝心な時は息子の才能を認めてほめてあげてるところはグッときた。日本だとなかなかなさそう、知らんけど。
音楽をやっていた銀行員や、スタジオ録音に参加してもらったバンド仲間、やたらハンサムとほめてくれる彼女のお母さんなど、周囲の人たちも心優しく温かい気持ちになれる。
元カノや別れた奥さんとか旦那さんが心に残るのはわかる。忘れたくても忘れられない。この二人もこの出会い、過ごした時間、作り上げた音楽でもって、忘れられない間柄となっただろう。切ない…
ダブリンというとどうしてもU2のボノやエッジの顔が浮かんでしまう。シネイド・オコナーとか。寒々しい曇天のイメージ。フィルマのレビューを読んでいたらけっこう行ったことがある人が多くて驚いた。ダブリンからロンドンに行くってのは国も違うし、かなりの気合が入りそうだ。