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クイズ・ショウのsyuheiのレビュー・感想・評価

クイズ・ショウ(1994年製作の映画)
4.0
1994年のロバート・レッドフォード監督作品。

テレビが大衆社会に普及した50年代アメリカ。人気クイズ番組『21』で回答者が答えを教わっていたという疑惑が持ち上がる。名家出身の美男で大学講師のチャールズ・ヴァン・ドーレンは視聴率優先のテレビ局により渦中の人物となり、立法管理委員会のディックは捜査に乗り出す。実話に基づく映画。

非常に面白かった。テレビ局による視聴率稼ぎの裏側を暴く、というのはこの映画のごく一面でしかなく、メインテーマとなるのはアメリカ社会に確実に存在する特権階級に対するある種の告発。番組スポンサーのGERITOL社は今も健在である。 https://www.geritol.com/

面白いのは、この映画による告発が庶民 vs 特権階級という単純な図式におさまっていないこと。名門ヴァン・ドーレン家の方々の"お厭いのない"暮らしぶり。優雅で知的な誕生日パーティーの様子。それに比べて庶民派のユダヤ系チャンピオンであるハービーの描かれ方は粘着質で狭量で醜男ときている。

誰もがヴァン・ドーレン家に憧れる。誰もがハービーを腐しチャールズを持ち上げる。公正たるべき捜査官のディックですらチャールズの品の良い物腰に惹かれる。かくして特権階級とその取り巻きは多少のぐらつきはあっても不動であり続ける。メディアはそれを補強し続ける。

ディックがチャールズに手心を加えようとする素振りを見て妻がピシャリと言い放つセリフが強烈だ。人間の尊厳や誇りというものは、時に心地よいものに靡きやすい。この映画を観ながら、かつて進路相談に乗った若者の言葉が思い出された。「父から"人に敬われる仕事に就け"と言われてるんです」。

https://twitter.com/syuhei/status/1510599738046889984
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