藤見実

ベルリン・アレクサンダー広場の藤見実のレビュー・感想・評価

3.5
戦間期のドイツ・ベルリンで地上の汚い天使をやった男の話。戦間期という時代設定に期待される政治的要素はそれほど多くない。27年から28年という反SPDが渦巻くがかといってナチ一色でもない微妙な時代の何処へも行けなさ(それがベルリンアレクサンダー広場なのだ)と、様々なものに足を取られ手を取られる男の話が異様にマッチしている。カタルシスは望めない。

ムショ上がりの主人公は真っ直ぐに歩けず立ちくらみする、「真面目に生きるのだ」と意気込む彼だが時代がそれを許さない。15時間の作中、唯一「真面目に」仕事するという意味でうまく行っていたのはナチの新聞売りだったことに注目するのは当然であろう。このような世の中で生きていくには家畜同然頭を空にするか、力を手に入れて抵抗するか、あるいは飲んだくれるか、(あるいはナチになるかアナーキズムに関与するか(お前はスポーツや闘争に熱狂したりするか?→いいや、そんなことはない→ならばお前には心があろう)、心を持ってはいけない)

ご存知、破滅的ブロマンスを描くことに長けているファスビンダーが10時間ほどかけてねっとりと作り上げる男二人(一方が天使なら一方は死神だ)の破滅、そして共犯の笑みは圧巻、二人はリングにあがってもお互いに闘いはしない。なぜなら愛しているから。


ファスビンダーらしいといえばらしいが(そもそもドラマだからだろうけれど)15時間は長すぎる、見たは見たけれどという気持ちになったのも事実。

しっかし男に対して女かたくさんいることよな。
藤見実

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