まぬままおま

青春群像のまぬままおまのレビュー・感想・評価

青春群像(1953年製作の映画)
4.0
フェデリコ・フェリーニ監督作品。

イタリアの田舎町に暮らす若者たちのどうしようもなくふらふらしている様を描いた物語。邦題のように群像劇が展開されるが、話の筋があるようでそうでもない。物語構造も彼らのようにふらふらしているのだが、なんだか見入ってしまう不思議な作品です。

それは彼らの機微をカメラにしっかり収めているからだと思う。
恋人の妊娠が発覚した時どのような行動を取るか、胸に秘めていた才能を認められたらどのような態度になるのか、姉が不倫をしていたらどうするか。
彼らは明確な態度を持っているわけではないふらふらしている者だから、だからこそ人間味が溢れている。それを丁寧に掬い取ったのが本作である。

ただ人をモノのように扱い恋愛をするステレオタイプな男性像のファウストには怒りしかない。こんな男は嫌だ。

最後のシーンもまたよい。というかモラルドが最高によい。
彼は、ファウストに孕まされ、結婚後も浮気される可哀想なサンドラの兄である。そんな妹をもつモラルドは不眠症で、寝静まった街を放浪している。だがそれは、田舎町でふらふらしていても何となく生きれる現実という微睡から唯一目覚めている者という意味でもある。
モラルドは親友のファウストの愚行をみても怒らない。同じように友人とつるんでだらだらしていない。彼は一人、大人へと覚醒しているのである。だから電車で旅立つ。それもモラルド以外の男たちが微睡んでいる夜明けに。
彼の旅にあてがあるわけではないが、心配することは何もないと思うのである。