クシーくん

カンニング・モンキー/天中拳のクシーくんのレビュー・感想・評価

3.8
プロットは行き当たりばったりで粗が多く、冗長というか無駄な展開も少なくない。しかし、今まで観たジャッキー初期の諸作品の中では私は一番好きかもしれない。

モンキーシリーズ(日本で勝手にそう銘打っただけだが)「酔拳」「笑拳」などと比べてコメディ色が圧倒的に強い。悪役とモブこそ死ぬが、身内が出てこない(両親は既に死んでおり、孤児という設定)、仲間が死なないのでジャッキーの曇らせ展開もない。徹底的にふざけ倒す事でシリアス化を妨害している。何よりコメディロールをジャッキー以外にディーン・セキにも分散させる事で、ジャッキー1人にのしかかっていたアクションとコメディの役割がバランス良くまとまっている。ジャッキーとセキのコメディアンとしての才能がバディを組む事で光っている。

ロー・ウェイは激怒して本作の公開を遅らせたらしいけど、多分コメディに比重を置きすぎて気に入らなかったんだろうなあ。ジャッキーをブルース・リーの後継としてシリアスな作風を押し付けたがってたみたいだし。ジャッキー本人が望んでいたコメディ・カンフーのバイタリティが本作で爆発した事で、後の傑作群に繋がったのだと思われる。そういう意味でも非常に重要な作品。

ただ、前半までのギャグセンスは正直古い。Mr.Booよりも新しい映画の筈なのだが、Mr.Booより笑いのネタが古臭いせいか、一周してカルチャーギャップ的な感覚さえある。パロディの部分に関しては冒頭の座頭市やポパイなどアクションと一緒に見せているので遜色無く楽しめたが。

妙にエキゾチックな西洋建築(これは逆説的な表現だが)が出てくるのが興味深いが、「蛇鶴八拳」や「拳精」などと同じく、台湾や韓国でロケしたようだ。これらの映画は同時進行で製作されたらしく、ジャッキーの顔つきやヘアスタイルがシークエンスごとにコロコロ変わるのもその為のようだ。妙に目張りキツめのジャッキーのショットは正直ちょっと違和感ある。ところで、本作はfilmarkでは製作国:台湾になっている。資料によっては香港・台湾としている物もあるが、少なくとも台湾映画ではないでしょう、これは。いい加減である。
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