主演が森雅之に見えた。シャツのシミ→ブタの目印はすごく良かった。隣室の二人がすれ違うのは路面電車の中という第三項も良かった。狭い路地とか室内は、たいていはセットの壁を取っ払って撮影するんだろうけど、真上から撮ってるショットが多くておもしろかった。群がる浮浪児たちに鼻歌を歌いながらさりげなく小銭を渡してやる素振りは現代の我々には絶対思い浮かばないだろうなとふと思った

☑️『十字路』及び『紅色娘子軍』▶️▶️
特に前者はそうだが、日本でもこの30数年変わらぬ人気の(後者は中国国内はともかく日本では?かな)、中華民国と中共(期)を代表するポジティブにカラッと力強い2本の映画。共に名匠の代表作の1本。
本当を云えば、孫諭=黎莉莉の作品を再見したかったが仕事とカブって無理。代わりに観たこの時代の中国映画としては日本で最もよく上映されてる作。高名な『街角の天使』等と並ぶ、世界レベルに通じると誰からも評価されてる、米日(ルビッチや小津)·不況も軽快に弾く小粋若さ·学生映画に直にリンクの、モダニズムの有名品だが、2、30年は観ておらず、かなり印象を新たにす。特に好きでも何でもない作品だが、3回目位になるか、スッキリ快感をまた味わうのも時間潰しになるかな、と足を運んだが、そんなに軽いだけでもない。1930年代後半の上海、日本軍進攻、不況、そしてそれ以前の根強い旧社会の名残、によって就職難·貧窮·倒産·失業·自殺·マスコミの力·一般的な不安や苛立ちが決して拭えず横行·蔓延している。顔も知らぬままお互いアパートの隣室ではみ出し·汚しが意地の張り合いとなってる、若い男女が街頭で好印象で知り合い、男が採用され任された新聞社の取材対象の工場に女の側がいて、交際深まるも、真相分かっても先に知った女の好意変わらず、男の恥を越えてく生来の明るさ。互いに失業·冒頭救った大学生の自殺等、等を更に経て各々の友人含め、４人でスクラム組んでくラスト。
モノクロの陰影と艶ある画調、柔らかい灯笠·窓枠·葉々越しの縦の図、前後や横へ大小自在なカメラワーク、独特ワイプや長めBO多用、OLの幻想処理の駆使、二階の窓下街路へや·室内も俯瞰退きショットの多さ、90°変やどんでんを中心とした巧みで斬新なカット変え角度の操り·対応、部屋内外(玄関や隣室含む)の当人状態分からぬあり方(対応)、西洋クラシック的音楽の適宜盛り上げ、出会いや反応·感情爆発のスピーディで過大な時にエノケン的動き、度を越してる他者へのアクションも陰湿にははまらず寧ろ活力に(同性でのじゃれあいも今レベルでも半端ない)、CUも多めの各人の表情·意図表現の根っこのベトつかない力、竹竿·人形·シャツの染み·豚さんの絵·手紙·写真·釘ほか小道具の様々な働き、衣装やトーンも西洋的なクリアさで進行。
作品自体の出来も悪くはない(いきいき何でもあり·臆面もなく、で一貫したスタイルには向かわない)が、それ以上に中共時代になると完全に失われる、何かに伺いを立てるような狭さがなく、見事にオープン·土台がスマート、こんな時代もあったのだ。
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このシリーズ、あまり観てこなかったが、最近になって国内のプリントが主流ではなくて、中国本国での修復·DCP化作品のレンタル(この後、FA所蔵の段取りか)が主と気付く。観た3本の画質が素晴らしかった。これは、以前観て不完全な画質のものでも一気にグレードアップしてるんだな、と期待し以前観た時、かなりひどい状態だった、『紅色~』を見直しに行った。が、画質は酷いまま。毎日通ってる人に聞くと、まだましで、一般的にはもっと酷いのが多いとの事。ソースのまんまでガタツキ画面のまであるとの事。中国の技術革新、一気にと思ったのは思い過ごしだった。
色は汚れ抜けていて、Lショットになると細部が極らず弛みも多々という一般料金を取るは詐欺といったクラス(コピーを重ねたせいか)だが、絵の力は何とか感じられ、テーマ·意気は伝わってくる。顔部分のみへのライティングやシルエットめ、力と引き締めの手綱弛めぬカメラ前後移動の鋭さ、人捉えを傾けてまでのリバース等の図の強さ、一方クレーン上下や·隊列の90°変切替えの拡がりや奥行き伸びの·ふところ示し、きつめメークの俳優らの一途な力と悪の体現·その対照、たぎるだけの若い力の周囲を見て影響されての着実な人の格の生まれて定着、騙し騙され·歪み正され·作戦や優劣の変移、汚れめ·実態感あるセット·美術と上位人物でも容赦なく犠牲化。後年の余裕よりより厳しく問い叩き込み·見事な密度と緊迫を実現してる、流石名匠作、若く·より純粋。緩急や陰影·締め所熟知、モンタージュのベースの上に築かれたこの種の当時·というかその前の最良のソ連映画を思い起こさせる。
１９３０年頃の中国南部、地主·国民党による民衆の弾圧·奴隷化、その歪みの最下層の無産階級の若い娘の恨み·行動を吸い上げた共産党下の初の婦女革命軍のエネルギー、ともすると個人の先走りに傾くが·組織や階級による規律ある成果なくては何も変わらぬことの認識と真の行動、打倒旧社会·全人民解放·意志の受け継ぎと理想の拡大の手応え。しかし、以前これを観たとき時は、天安門事件以前だったが、今観ると、この間に中国国家の真の姿が世界に分かってしまっていて、まるで架空でも説得力がなくなってしまっている。

1930年代後半の上海。大学を卒業したけれど仕事がない男達。ある者は仕事がないので田舎に帰る中、主人公の趙は新聞社での職を得て・・・という話。

洗練されたやり取りでのコメディが中心だけど、新聞の記事による貧困がねじ込まれ、コメディと貧困の悲哀が差別化されて並列されている。不思議な映画。最終的には貧困の中でも前向きに生きていこうというところに落ち着く。

波止場の風景ではジャン・ヴィゴを連想し、男女のやり取りではエルンスト・ルビッチを連想した。
カットの切り替わり方が面白い。
路面電車等当時の上海の風景が見られるのも良かった。波止場や朝日の風景が特に美しい。

就職した喜びで友達の泥人形を叩きつけたり、ベットに勢いよく倒れたりと喜び方が狂喜的で笑った。大家の奥さんの表情の感じがいい。