菩薩

夜行列車の菩薩のレビュー・感想・評価

夜行列車(1959年製作の映画)
4.2
大阪のオバチャンを彷彿とされる図々しさで男性専用寝台に居座る女と、疲れているのに彼女と相部屋をする羽目になってしまった何やら訳ありな男。当然ババァないしクソブスであれば全力で叩きのめしてほっぽり出して終わり何一つドラマは展開して行かないわけだが、いかんせんこのヒロインが背中が肩甲骨まで開いたザックリめのニットにポニーテルともはや俺得でしかない格好をしており、夜行列車・個室・二人きりから導き出されるロマンチックな展開を期待せずには、止められずにはいられない。目に入ったゴミを取ってやろうではないかと口実をつけてのはじめての身体的接触からタバコを介しての和解シーン、徐々に打ち解けていく彼女はついには彼の前で裸になりつつパジャマに着替える始末(ここでツインテールにチェンジ)、パジャマでお邪魔どころの騒ぎではないがなぜ直視しないのだ!と俺氏はカンカンである。しかし話はそう簡単には行かず、彼女を追いかけて電車に飛び乗って来たストーカー野郎だとか、となりの個室の情慾を持て余した人妻だとか(全然イケる)、新聞紙面を騒がせる逃亡犯だとか、乗客の数だけの様々な人生模様が入り混ざって展開されていく。結局我らは彼らが誰かは知らぬし、どこから来てどこへ行くのか、いや終着駅は分かっていてもその後の人生は何も知り得ない、駅に着いた彼を笑顔で待ち受ける嫁、一抹の寂しさを持て余したまま、映画も静かに終点へと導かれていく。
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