たかちゃん

激動の昭和史 沖縄決戦のたかちゃんのレビュー・感想・評価

激動の昭和史 沖縄決戦(1971年製作の映画)
3.9
封切りで観ているが、当時は沖縄戦について無知だったため、ずっと見直さなければと思っていた作品である。
軍人は民間人に死ぬことを強いるが、島田県知事は「生きるんだ。自分のため、国のために」と叫ぶ。その声が届かない人たちは、毒を飲み、あるいは数人で固まり自爆する。司令部の連中は洞窟の中から出ないで、思い付きで命令を下している。ここには英雄はおらず、愚かな軍部(日本国)の犠牲になった人たちが累々と横たわっている。凄惨な地獄絵図である。
東宝8.15シリーズ中、もっとも悲惨で、娯楽性を排除した作品。新藤兼人の脚本は、調査による数字と遺書の引用などの情報でナレーションに埋め尽くされている。それだけに、絵作りには苦労したと思われるが、岡本は脚本に負けていない。『独立愚連隊』同様、反戦というより厭戦のメッセージを発している。それに対して、佐藤勝の音楽は戦争映画風の曲で、凄惨な画と合っていない。対位法のつもりなのか。伊福部昭のような重厚さが欲しいところだ。
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