陣地にたてこもり、意味のない議論を延々と続ける軍の上層部。対して、艦砲の爆撃の中を行くあてもなく逃げ惑い、命を落としていく沖縄の人々…。
阿鼻叫喚のシーンの連続に言葉がありません。
沖縄戦での苛烈な戦争談は、さまざまなメディアで見聞しておりますが、この作品ほど生々しく可視化されたものはないのではないでしょうか。
近年でこそ、『プライベート ライアン』以降、特殊効果の発達もあり戦争描写のリアリティ度が増してきていますが、この映画が作られた当時は、まだまだ実際の戦争よろしく人海戦術が主流だったでしょう。そこでここまでの圧倒的な描写力には、この映画にかける、岡本喜八監督以下役者陣スタッフ陣の意気込み気合いが伝わってきます。
公開された1971年頃は、戦争が終わって26年、安保闘争もまだまだ激しかったはずでしょうし、海外ではベトナム戦争も激化していた頃です。
そういった左翼思想全盛時代に作られた戦争映画ですから、何をか言わんやでしょう。
今と違って映画関係者や役者陣もある程度自分自身の政治的姿勢も持っておられたのではないでしょうか。
そうじゃないと説明がつかないくらいの完成度です。
戦争と暴力は絶対にあってはならない。