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肉屋のakrutmのレビュー・感想・評価

肉屋(1969年製作の映画)
3.4
トレモラという田舎の村で校長をしている女性が、同僚の結婚式で地元の肉屋の男性と知り合ったことで、村で起こる殺人事件に巻き込まれる姿を描いた、クロード・シャブロル監督のサスペンス映画。

『肉屋』っていう直接的なタイトルからして凄いんだけど、その肉屋を演じているジャン・ヤンヌが最初から胡散くささをプンプンと発していたので、さぞかし強烈なサスペンスが展開されると期待して観たけれど、かなりあっさりと終わってしまった。サスペンスとしての舞台設定(鍾乳洞や壁画を使うというアイデアはグッド)や雰囲気はとても良いので、当時ならばこのようなシンプルな展開でも十分に印象に残る作品だったのかもしれないが、現在だとちょっと厳しいのかもしれない。なので、ここでの高評価は、個人的にはとても不思議。

本映画の見どころは、サスペンスそのものよりも、エレーヌを演じたステファーヌ・オードランという女優にあると言える。クロード・シャブロルの監督2作目に当たる『いとこ同志』でちょい役で出演してから、シャブロル作品には欠かせない存在となる。『いとこ同志』の直後から二人は付き合うようになり、1964年には正式に結婚している。

そんなシャブロルのミューズだけあって、ステファーヌ・オードランが映っているどのシーンを取っても、これでもかと言うほど彼女の魅力をひけらかしている。シーンごとに様々なファッションを披露しているのも印象的で、いつもパジャマと見間違うようなシャツしか着ない肉屋との対比で特に目立っている。確かに、本作でのステファーヌ・オードランは美しいのである。





***** 以下はネタバレかも。 *****

個人的には、(エレーヌに交際を拒否されて)可愛さ余って憎さが百倍となった肉屋が、エレーヌが犯人として逮捕されるように仕向けるというプロットだとばかり思っていた。第一発見者となったエレーヌと警察のやり取りの中で、そのように疑われてもおかしくないような会話が交わされているし、最後のシーンでの肉屋の行動だってそう。それなのに、恋愛譚のようなラストになってしまったのが、個人的には不満なのである。
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