このレビューはネタバレを含みます
★前書
木村拓哉の映画作品を観る。
4作目は2010年公開の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』。
2010年のSMAPはシングル曲『This is LOVE』を発表。
5大ドームツアーを行い、年末の紅白歌合戦では大トリを務めるなど、人気は絶好調。
木村拓哉個人としては“月9ドラマ”の主演を勤める一方、2011年には日曜劇場『南極大陸』の主演を務めている。
プライベートでは結婚から10年が経ち、まさに俳優としても個人としても、油の乗った時期の作品だと言えそう。
ちなみに『宇宙戦艦ヤマト』は今も作品が制作されてるけど、ワシ的には1978年の『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』で物語は終了してるという認識。
それ以降の作品はぜんぜん知らない。
★雑感
漫画やアニメの実写化作品って、あまり良いイメージが無い。
もちろん大ヒットした作品もあるが、往々にして微妙な出来になりがちな印象がある。
この作品も、なんだか微妙な作品の匂いがする。
だから大きな期待はせずに観ることにした。
主人公・古代進を木村拓哉が演じるのに賛否はあるかも知れないが、やはり彼は華のある人だなぁって思う。
彼の脇を豪華な出演者たちで固めているが、アニメのキャラの風貌に寄せたキャスティングは心憎い。
中でも技術班長・真田を演じる柳葉敏郎はそっくりだ。
本作の物語は、ガミラスとの戦いやイスカンダル星への旅を描いた、最初のアニメシリーズを元にしている。
そこへ『さらば宇宙戦艦ヤマト』要素を足して、水で薄めたような感じ…といったところか。
“水で薄めた”というのは、本作独自の要素や演出が加えられてるということ。
映像の部分では原作アニメの表現を忠実に再現しようとしてるが、物語はかなり変更が加えられてる。
まぁこの作品に限らず、原作通りの実写化なんて無理なんだし、良し悪しはともかく変更は付き物だと考えたい。
しかしながら、それら変更部分が、必ずしも作品にプラスになってない気がしたなぁ。
序盤から中盤はまだしも、それ以降ではデスラーが意味不明な存在になってたり、ガミラスとイスカンダルが一体化してたり等、意外過ぎる変更がある。
わざわざそんな変更をする意味が、ワシにはよくわからなかった。
でも原作を知らない、またはこだわりが無い方々からしたら、そういう変更はさほど気にならないのかな?
さらに放射能除去装置に関する諸々の変更は、一体何やってんの?と思った。
やってることが“一か八かの賭け”なんてレベルじゃない無謀さに思えて、呆れた気分になってしまった。
それに、全部セリフで説明してばかりだし、そんなミラクルパワーがあるならまず自分の星の放射能除去からじゃね?って思った。
いくらなんでも、そんなグダグダ展開で「よかったよかった♪」とはなれないよ…汗
ある程度予想はしてたことだが、気分良く「面白かった!」とは言えない作品だったなぁ。
時折目を惹くシーンはあるけど、全体としてはモッサリしたお涙頂戴ドラマになってしまってる。
この作品は「宇宙を舞台にした戦争映画だ!」とか「宇宙で艦隊戦を描きたい!」というように、描きたいことの焦点が絞り切れてない感じ。
そうさせてしまってるのは、豪華共演者たちへの配慮や忖度だったんじゃないかな?
豪華共演者たちは、要するに脇役で登場してるんだけど、それぞれに何らかの目立つシーンや演出が用意されてるんだよね。
そのために話が捻じ曲げられてる気がするし、そうまでして描いたシーンがいちいちクドくて、観てるとダルくなってしまう。
そういうシーンなど無く、監督が思い描いた通りに作られてたら、かなり違った作品になってたんじゃないだろうか。
そんな様々なツッコミどころもありながら、木村拓哉は作中で八面六臂の大活躍!
泣きの演技が下手な黒木メイサを相手に、最後までしっかり演じ切ってる姿は立派だった!
作品の出来はともかく、彼のキャプテンぶりは、ワシは好感を持って観てた。
細かい話だけど、短いカットを重ねて場面の緊迫感を出す見せ方って、よくあるでしょ?
この作品って、そういう見せ方を一切せず、ワンカットでヌルっと人物の表情をおさえていく見せ方なんで、戦闘シーンとかも盛り上がりに欠けるんだよなぁ。
全くの想像だけど、カットを割るなどの手間暇がかけられなかったのは、出演者のスケジュール都合が影響してたんじゃないの?
人が揃った時に、ワンカットでじゃんじゃん撮影しなきゃならなかったのでは?…なんて、思ってしまった。
まぁ何やかんやゴチャゴチャ書いてみたけど、どんなに攻撃受けてもヤマトは航行可能だし、波動砲で無双しまくる所はアニメと同じだな〜って思った。
今回はそんな感じでした。
★後書
実写版『宇宙戦艦ヤマト』は本作のみだけど、アニメ版の作品って沢山あるんだね。
今回調べてみるまで知らなかったんで驚いちゃったよ。
で、やはり調べてみるまで知らなかったことだけど、『宇宙戦艦ヤマト』の原作って松本零士だと思ってたけど、ホントは西崎義展なんだね。
そこには色々な権利訴訟が相次いだみたい…。
単なるアニメ作品ではなく、様々なメディアを巻き込んだ映像コンテンツと化す過程で、色んな思惑とかすれ違いとかあったのかねぇ…。
そんなゴタゴタを経ながら今も続く『宇宙戦艦ヤマト』シリーズは、この先どこまで行くのやら…?
★余談
TBSの開局60周年記念作品らしいけど、この作品を「60周年記念作」と紹介してるネット記事って全然見当たらない。
TBSのHPを見ても、この作品について「60周年記念作」との記載無し。
なんでなん?