にこ

晩春のにこのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.0
皆様朗報!4月はBSプレミアで毎週小津作品デジタルリマスター版を上映しますよ!
そんな今週は晩春です。

秋刀魚の味を先に観たので、ストーリーがかなり類似しているのが第一印象ですね。
父親と娘の嫁入りがテーマで、秋刀魚の味は父親。
晩春では娘に焦点が当てられている。

東京家族ではマリア様のような紀子さんを演じていた原節子だが、晩春ではもっともっと表情が豊かに若干の恐怖を感じる演技を魅せてくれています。
お父さんが大好きで、一緒にいれるだけでそれでいい。結婚なんてしてしまったらお父さんと一緒にいられなくなる。私がいなくなったら身の回りの世話をするひとがいなくなる。それなら嫁になんていかない。と突っぱねる紀子。

そんな紀子の様子に、父は再婚することを紀子に伝える。
そうでも言わないと嫁に出ないと考えたからだ。
そんな様子も紀子は前々から感づいていて、伯母さんから父にいい人がいるという話をきいてからの動揺や、父と観にきた能の最中に、その女性と父がアイコンタクトで挨拶をしているのも目撃したあとの紀子の様子は私はかなり好きなシーンです。
もう能どころじゃなくなってしまった紀子は嫉妬の塊になってしまっていく。
そのあとも父親に冷たく当たってしまったり、かなり紀子は気持ちが不安定な子でしたね。
言うなれば、ファザコン。
キッと睨むその表情はほんと、鳥肌たつほどに。
お父さんもガン無視。伯母さんもガン無視な紀子の態度はもう苦笑いするしかない。

お父さんの再婚話で紀子はやむなく見合い話を受けることを決めて、最後の家族の旅行と京都に行った際、お父さんの紀子にかけた言葉はなんとも考えさせられました。

「結婚が幸せじゃない。夫婦が新しく人生を作っていくことが幸せなんだ」

結婚したって幸せにならないなんて言った紀子はきっと、お父さんと今まで作ってきた幸せを壊したくなかったんだよな、と私は思った。
それをお父さんは新しく作っていかなくちゃいけないと、諭すこのシーンは名シーンですね。

そしてラストのお父さんのリンゴの皮剥きのシーン。
映画史に残る名シーンだよぉぉぉぉ!!!
すばらしいよぉぉぉぉぉぉ!!


日本の家族団欒なのほほんとしたものではない、辛辣な描写が多い小津映画ですが、
紀子の不潔発言や杉村春子の財布を拾うシーン、熊太郎名前問題、紀子の無視シーンなど笑えるところもあり、個人的には秋刀魚の味の方が好きですが、母は本作のほうが良い、と好評化です。
どちらにしても、小津映画は良い、これにつきる。
にこ

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