Yutaka

晩春のYutakaのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.5
一見、父親を置いて嫁に行く事に対する娘、可愛い娘を嫁がせることに対する父親の心の葛藤を真正面から描いた切実な作品であるように見えるが、そんな単純なものではないように感じた。
今作はなんせ小津安二郎の癖/フェチシズムが滲み出ていると思う。普遍的な親子愛に隠れた禁断の近親相姦的モチーフがどうしても見え隠れする。それは本作の議論の的になっている壺のシーンでも明確に表れているし、劇中の原節子のふと見せる表情に肉欲的な感情がどうしても見えてしまう。それは『東京物語』で見せていた献身的な表情とはまた異なる表情だった。その点から言うと、ただ古典的な日本の美学、日本らしさを捉えただけの映画では無いことが分かってくる。
勿論、当時の日本、京都や鎌倉の美しい風景を映している事が価値のある事でもある。龍安寺の石庭も清水寺の清水の舞台も現代のそれとはまるで違って見える。
日本的な美学のトーン&マナーの残像に小津安二郎のフェチシズムが投影されている辺り、こんな純文学然とした映画は中々お目にかかれない。かなり攻めている。
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