Yutaka

蜘蛛巣城のYutakaのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
4.3
有名なラストシーンだけ知ってたけどやはり途轍もなかった。元々戯曲である『マクベス』を日本の古典文化である能というエッセンスを取り入れつつ、強烈なスペクタクルを持つ時代劇を成立させる黒澤明の手腕は今作でもえげつない。
ラストの矢のシーンを筆頭に、圧巻の軍勢や、林の中を駆け抜ける様など、リアリティを極めたスペクタクルな映像は、本当に戦国時代の映像を見ているかと錯覚してしまう。それは武士たちの殆ど何を言っているのか聞き取れない(笑)野太く猛々しい怒号の数々によってより説得力が増す笑。
通底するリアリズムとは他所に、『マクベス』にある夢幻的な要素も際立っている。濃霧の中に佇む蜘蛛巣城や、老婆の予言、妻の発狂などが耽美的でありつつもとても恐ろしい。『雨月物語』を彷彿とさせる美しさと恐ろしさに黒澤明のスペクタクルが加わった最強のシェイクスピア翻案です。
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