Yutaka

汚名のYutakaのレビュー・感想・評価

汚名(1946年製作の映画)
4.2
本作はヘイズコードを逆手にとって3秒以内のキスを繰り返す事で長時間のキスシーンの撮影に成功した事でも有名なので、もちろんメロドラマ要素が強く、前半30分弱はずっとメロドラマで正直退屈なのは否めない。然し、偽装結婚の潜入捜査が始まってからのサスペンスは流石のもの。めちゃくちゃ面白い。それと同時にセバスチャンの純粋な愛情がフックになって、潜入捜査という本心と建前が交差するイベントをより複雑化させることで感情を揺さぶってくる。
戦後まもない映画なので、ナチスに対する描写は勿論手厳しいもので、ラストも非情な終わり方になっている。メロドラマに関しても、アリシアはデブリンに対して真っ直ぐ想いを寄せる一方で、ドイツと繋がっているセバスチャンには一切振り向かない。それが却ってセバスチャンに対する観客の同情心を煽ってくる。個人的には、ストーリーラインとメロドラマに求める方向性の不一致から来るアンビバレンスな思いが、図らずしも最もサスペンスな要素だった。
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