イスケ

ザ・フライのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・フライ(1986年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ヴェロニカが急にセスのことを好きになったから、「色仕掛けで取材かよコイツ……」と思ったら、マジ恋とはw
どこでどうなったの。(大人の恋ですね)


皮膚がこぼれ落ちたり、ただれていったり、歯が抜けていく様子は気持ち悪いんだけど、やっぱり好き。
このグロさ一本でも楽しめるのがクローネンバーグなんだよなという想いは、観れば観るほどに深まってゆく。

ゴリゴリのゴア描写なのでそこはクローネンバーグらしくありつつも、ハリウッド資本で純愛モノでもあるからなのか、シザーハンズをちょっと思い出したりなんかして。


ヴェロニカはよく愛し続けたよ。
ハサミ男とハエ男だったら、圧倒的にハエ男の方が難易度が高いもの。

ハエ男になってしまったことは紛れもなく悲劇だけど、ラストでお互いがお互いを想う形で、ヴェロニカが銃をぶっ放したのは、愛を貫いたということに他ならない。
グロの先に待つ、とてつもなく捻くれたハッピーエンド。

特にセスはもう理性をハエに喰い散らかされてる状態でしたからね。
ヴェロニカを襲った自分と、ヴェロニカに何とか逃げて欲しいと願う自分とが戦っていたのだろう。


でもこれ見たら、旦那とか嫁が太って、かつての姿が見る影もない……なんて、可愛いもんだ。許そうぜ、許してよ。

教習所で数年に一度見させられる交通安全ビデオよりも、夫婦で数年に一度この作品を観て、「私達はまだ大丈夫」と確かめ合う方がきっと人生を助ける。


見ようによっては、科学一筋の人生の最後を愛で締めくくった物語とも取れるよね。

ノーベル化学賞を取れるかもしれなかったのに、ロクな資金援助も受けずに自分だけで実験をしていたような人ですよ。

「自分が興味を持った研究に100%の力を使う」という、地位やお金や名誉に目もくれない雰囲気。
かつてノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんを思い出しました。

そんなセスはハエ男化しても、「ハエ人間第一号」として醜い自分を記録に残しておくのが、探究心の塊であることを思わせる最たるところ。
いつのまにかスパイダーマンのような技を身につけていた時も、どこか楽しそうな雰囲気すらあったもんね。

だから、最後に自分に銃口を向けるように促すシーンは、ギリギリの理性の中で、科学よりも純愛を取ったことの表れだったんじゃないかなと。まぁ、これは深読み。
イスケ

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