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ザ・フライのEyesworthのレビュー・感想・評価

ザ・フライ(1986年製作の映画)
4.5
【ハエ男の実験記録】

デヴィッド・クローネンバーグ監督、ジェフ・ゴールドブラム主演の世にも奇妙なハエ男ホラー。

〈あらすじ〉
天才科学者セス(ジェフ・ゴールドブラム)は、とあるパーティーで出会った記者のベロニカ(ジーナ・デイビス)をいきなり部屋に招き入れ、世紀の大発明「転送ポッド」を披露する。試しに彼女の脱ぎたてストッキングを転送させることに成功し大スクープとして取り上げたいと奮起するが、セスとしては有機物の転送に成功するまで公表しないことを決めていた。しかし、ある時ヒヒの転送に成功したことで自信と確証を得たセスは自らを実験台にして転送することを決意する…。

〈所感〉
クローネンバーグ監督の作風とも言える人間の肉体の変容を描いた「ボディホラー」が堪能できる一作。室内にハエがブンブン飛んでいる時点である程度ストーリーは想像できるが、それでもあの変容ぶりはスリル満点で意外性もたっぷりである。そしてめちゃくちゃグロテスクである。カフカの『変身』のように、一瞬でわかりやすい昆虫の造形に変身するのかと思いきや、人間身体の抵抗からか変化は徐々に訪れるため日に日に恐ろしい形相となっていくのが妙にリアルで事の重大さを際立たせる。しかもその実験を行うのがジュラシックパークで主役を食う存在感を発揮していた科学者イアン・マルコムの俳優ジェフ・ゴールドブラムだから、役柄にピッタリのマッドサイエンティスト感がある。イアン・マルコムのサイドストーリーみたいだ。昔、ポケモンのファイアレッドのハナダシティ近くでポケモン研究者マサキが実験の失敗でポケモンと融合していたのを思い出した。ゲームなのでコミカルな画で笑えたが、あれが現実なら笑えない事態である。物質転移はロマンに溢れているが、今の時代もまだリスクが高すぎる夢物語に過ぎないようだ。ヴァーホーヴェンの『インビジブル』と並んで夢は永遠の夢として頭で想像するくらいがちょうどいいのだと思える作品。
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