Keigo

ベニスに死すのKeigoのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
4.5
借りてたレンタルDVDもきっちり期間内に消化してポストに投函し、息抜きにスピルバーグ作品とケリー・ライカート作品も観たので再び、カランさんからのオススメを。ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『13回の新月のある年に』を観る前に、ヴィスコンティの『ベニスに死す』を経由してはどうかとアドバイスをいただいたので。

ルキノ・ヴィスコンティの作品はこれが初めてで、トーマス・マンの原作もタイトルは知っているものの未読というほぼまっさらな状態での鑑賞。

…なんだろう、この尊さは。この儚さは。
出ました、傑作を観たぞという満足感と余韻にひたひたの状態でのこの感情。

文学、音楽、映画、あるいはそれ以外のものをも含めて調合し、蒸留し、精製された限りなく純度の高い芸術とでも言うような。もはや映画というレイヤーからも飛び出してしまっているような、神秘的な崇高さのようなものを感じた。

音楽も素晴らしい。
これがマーラー…
こんなにクラシックがマッチしていると感じた映画は初めてかもしれない。

抗えないほどの圧倒的な美、そこに漂う死の予感。三島由紀夫みを感じるのは自分だけじゃないはず。偉大な芸術家達が取り組んできた主題を、映画という形式で実現してみせたルキノ・ヴィスコンティはやっぱり偉大で、それはあのビョルン・アンドレセンの美貌あってこそだというのもまた、紛れもない事実だろう。


【追記】
レビューを書いてから色々と調べてみると、この作品には特にまだ少年といえるビョルン・アンドレセンについて看過できない背景があるということを知った。ここ最近の日本においても、とてもセンシティブな話題だ。それを知ってしまったことで、自分が作品に対して抱いた感想は変わってしまうのか。むしろ変わるべきなんだろうか。その事実によってこの作品は、穢れてしまったのだろうか。自分にはまだ、分からない。
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