Antaress

ベニスに死すのAntaressのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
5.0
1番好きな映画は沢山あり過ぎて選べないけど、これはその【1番好きな映画】の中でも上位に入る作品。

極上に耽美で超セレブなおっさんずラブ映画。

リアル貴族の血を引くヴィスコンティだからこそ描けた世界。

アッシェンバッハが自分を見ていると気付くと真っ直ぐに彼を見つめ返すタジオ。
ストーカー化したアッシェンバッハをからかう様に必ず振り返ってみせるタジオ。

タジオから見たら祖父程の年齢の男に付き纏われているのに厭う様子は無い。
寧ろ楽しむ様に軽くあしらいながら己の美を見せ付けて行く。
それは自分を賛美する者へ与える褒美なのだろうか。

衣装がほぼ白と黒なのも天使と悪魔が融合したタジオの美の象徴のよう。

ラストでタジオは彼方を指し示しアッシェンバッハを誘う
「今こそ逝くべき時だよ」と…

ベニスに着いた日に話しかけられた白塗りの男を蔑む様に見ていたけれど、結局自分も白塗りをし髪を黒く染めたアッシェンバッハ。それも全てタジオに若々しい自分を見せたいがため。
汗で髪から黒い染料が顔に流れ落ち、ぶざまな姿になった彼は醜くて滑稽で哀れで愛おしい。

煌めく陽光を背に立つ死の天使タジオ。
彼を愛でつつ召されたアッシェンバッハ。
そんなアッシェンバッハの死こそ最も崇高で美しい究極の愛の形だと思えるのです。
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