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遠い空の向こうにのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

遠い空の向こうに(1999年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

炭鉱という地下世界で働く親父。
宇宙という未知の世界を目指す息子。

親父は片田舎の経済を支える唯一の手段、炭鉱を取り仕切る厳格で勇敢な漢。
この田舎を出るには、フットボールで活躍し大学に行くか、炭鉱夫として働くか。金を稼ぎ、生活をするにはこの二択しかない。

誰もがレールの敷かれた人生。
しかも、炭鉱では人が死に、汚れて煤だらけになり、肺は冒され、危険の割りに貧困からは抜け出せない。

兄はフットボールで活躍し、将来有望な選手。地元やその世代のヒーローだ。

引き換えに弟は兄のような強さはないが、ガッツはあった。しかし、レールを引っぺがして別の道へ進むほどではない。

そんなある日のこと、ソ連が世界初の衛星打ち上げに成功する。あらゆる人がその偉業に空を見上げた。

10月の空、少年の目には、流れ星のように地球を周回する人工衛星がどのように映っただろうか。

彼の心には、その美しい姿に無限の可能を感じ、さらに、自身の境遇儚さを感じたのではないだろうか。

彼はクラスで鼻つまみ者にされていた男にロケットについて質問する。そして、彼と他の仲間と四人でロケット作りを始める。

何度も失敗しては改良されていくロケット。
始めはただの爆竹だった。それが作るうちにペットボトルロケットレベルになる。

そこでもっと高レベルなものにするため、費用のかかる器材の購入を考える。費用を捻出するため、彼らは廃線となった線路を売って工面する。まるで自分に敷かれたレールを取り外すかのごとく。

父は組合の労働抗争、地下炭鉱での事故を経て、より一層息子が炭鉱夫として仕事をすることを期待する。父親は極めて現実主義者だ。事故が起こることを誰よりも早く察知し、誰よりも被害を縮小させる。

地下へ地下へ炭鉱を掘り進める現実的な父親と、空へ空へと夢を見続ける理想家の息子。父は彼を貶したり、軽蔑したりは決してしない。ただ、早く仕事を覚え、生計を立てられるように息子を案じているだけだ。

そんな気持ちは理解しているが、夢は捨てられない。ハイスクールの科学大会で優勝すれば、進学、奨学金の夢が叶い、人生に3つ目の選択肢が生まれるかもしれないからだ。

少年は先生の力を借りて苦悩を乗り越え、一時は父親が事故で怪我をしたことから炭鉱で務め始めたが、そんな中でも数学と科学の努力を続け、大会に出場し、優勝する。

最後は父親も息子たちの偉業を認め、彼の作ったロケットの打ち上げを見届ける。父親だけじゃなく、先生も友人も炭鉱夫も誰もが空を見上げた。そして、ロケットはこれまでよりも遥かに高く、空へと打ち上げる。

遠い空の向こうに。
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