HAYATO

ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛のHAYATOのレビュー・感想・評価

3.3
2025年59本目
ナルニア滅亡の危機
C・S・ルイスの名作児童文学『ナルニア国ものがたり』の実写映画化第2弾
角笛の力で再びナルニアを訪れたペベンシー兄妹が、流浪の王子・カスピアンと共にナルニア再興をかけた戦いへ挑む。
ペベンシー4兄弟が白い魔女を倒し、平和を取り戻してから1300年。ナルニアはテルマール人によって占領され、民は迫害の末に森の奥深くで息を潜めていた。一方、テルマール人の王子・カスピアンは、王位を狙う叔父に暗殺されそうになり命からがら逃げのびる。森へと追い込まれた彼は“伝説の4人の王”を呼び戻すことができるという魔法の角笛を吹き……。
監督は前作と同じアンドリュー・アダムソン。『パニッシャー』のベン・バーンズ、『マイ・プレシャス・リスト』のウィリアム・モーズリー、『真珠の耳飾りの少女』のアナ・ポップルウェルらメイン出演者も前作に引き続き出演する。
本作の冒頭では、ペベンシー兄妹がロンドンでの生活を送る様子が描かれる。彼らは前作でナルニアの王となり長い年月を過ごしたが、現実世界では元の年齢に戻っており、そのギャップに苦しむ姿が印象的である。ピーターは自らがかつて王であったことと、現実世界での平凡な学生生活との間で葛藤している。一方、エドマンドは前作での教訓を活かし、兄・ピーターを支える冷静な役割を担うようになっている。スーザンも成長した姿を見せるが、ルーシーは前作と変わらず純粋な信念を持ち続けている。
物語はカスピアン王子が追われるシーンから始まり、彼がテルマール人の支配する世界での王位継承争いに巻き込まれていることが明かされる。しかし、彼の登場は唐突であり、前作の流れを知らない観客にとっては少々分かりにくい部分がある。原作ではこの背景が詳細に描かれているらしいので、小説を読めばより深く理解できるのかもしれない。カスピアン王子のスピーチによってナルニアの民が彼に忠誠を誓う場面もやや説得力に欠き、彼が何か大きな功績を残したわけではなく、ただ言葉だけで民をまとめるという展開には、安易さを感じざるを得ない。
本作では戦闘シーンが前作よりも増え、よりダイナミックな映像が楽しめる。ナルニアの珍獣たちの個性を活かした戦術や、ネズミのリーピチープが猫を前にして一瞬ひるむなど、細かいユーモアも散りばめられている。ただ、ピーターとカスピアンの対立や、ピーターの無謀な作戦のために多くのナルニアの民が犠牲になる場面では、ピーターの未熟さが強調されてしまう。戦略的なミスを犯しながらも彼が大きく反省することがない点は、共感を得にくい要因となっている。
アスランの登場は前作と同様に神秘的なものとなっているが、彼の受け身な態度には疑問が残る。ルーシーが「どうして早く助けてくれなかったの?」と尋ねた際の「同じことは二度起きない」という返答は、明確な説明になっておらず、納得しがたいものとなっている。アスランは登場するだけで戦局が一変するほどの力を持っているので、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でのキャプテンマーベルの扱いに通じる大人の事情ってやつかな。
また、そもそもペベンシー兄妹がナルニアのために戦う動機が不明瞭なのも気になる点だ。カスピアンは王位奪還という明確な目的があるが、ペベンシー兄妹は命を懸けて戦う理由が弱いような気がする。
原作を読んでいない自分にとっては、いくつかの展開が唐突に感じられ、もう少し丁寧な説明があればより楽しめる作品になったのではないかと思う。それでも、ナルニアの世界観やビジュアルの魅力は健在であり、ファンタジー映画としての魅力は十分にある作品と言える。
Netflixで配信予定のグレタ・ガーウィグ版『ナルニア国ものがたり』が楽しみだな。
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