KingKazukiManji

炎628のKingKazukiManjiのネタバレレビュー・内容・結末

炎628(1985年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

早朝から激重たい映画を観てしまった。

前評判から覚悟はしていたが、心に何かが重くのし掛かるような作品だった。

全体的に陰鬱で、我々観客に不快感や不安を煽る演出が目立った。最初の1時間半は、直接的な描写が殆どない。しかしその、淡々と主人公の精神を破壊しにかかっていく物語運びは、少し退屈ではあったものの、大きな何かが来るという、漠然とした緊張感を与え続けていた。そして、1時間半近くの静寂を突き破った先に、本作で最も象徴的なシーンに突入する。ドイツ兵が登場してきてからの絶望感というのは、ほんとうにすざましいもので、あの虐殺シーンを観ている時は、動けなく、びっくりするくらい見入ってしまった。ドイツ兵を数人捉えて、今度は主人公たちが虐殺するシーンは、もうほんとに言葉が出ない。最後の終わり方も素晴らしく、実際の映像を交えることで、よりリアリティを感じさせてくれた。これと同じことが628の村で起きたことが衝撃すぎた。

あと主人公の演技が凄すぎた。観客の我々がドン引きするくらいは圧倒的であった。

大学入りたての頃、ゼミの時間に、ヒトラーって凄いよねっていう話になった。なんて言うか、低迷していたドイツをあそこまで復興させたのは、ほんとうに凄いと思うし、ある種尊敬できる所もあるよねと、肯定的な受け取り方もできるという話になったのだ。しかしこの話は教授に、”どんな理由があろうとヒトラーを称賛することは、肯定的な捉え方をすることはできない。してはいけない。”と割とガチなトーンで怒られた。何故って彼は、物凄い人を虐殺したからだということだった。中学の頃にフリードリヒを読んだし、高校の頃にアウシュヴィッツのことも学んで、ある程度ナチスが行った行為を知っているつもりではいた。教授が言ったことだし、正しいのだろうけど、しかしそこまでヒトラーを称賛してはいけないということが、心のどこかで理解しきれてなかったのだと思う。オリンピックに関係するお笑い芸人が昔、ナチスのネタをやったということで解雇されたことを思い出した。国際的にも彼らを肯定的に扱うなんてもってのほかだという感じだった。正直まだ幼かったこともあって、何故なんだろうとは思っていた。しかしながら認識が甘かったなと、改めて本作を観て思わされた。あまりに無知であった自分を恥じたい。どんなにヒトラーがカリスマ性に溢れていて、凄かろうと、あの虐殺というものを、どう足掻いても肯定的に扱うことなどできないのだ。本当のところ、ショアも観たいのたが、あまり観る手段がないのが痛い。

ゲオでDVDを借りて観たのだが、本編が136分しかなく、143分あるオリジナル版は、Amazonで売ってるDVDを借りないと観れないのかもしれない。それとも上映時間表記が間違っているのかもしれない。
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