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横道世之介のヨウのレビュー・感想・評価

横道世之介(2013年製作の映画)
4.5
この映画は上映時間2時間40分という、なかなかに長尺な映画だ。それだけで気が引けてしまう人もいるかもしれないが、僕自身はあっという間に感じた。

とはいえ、起伏に富んだストーリー展開があるわけではない。大学に入学した世之介の、周囲の人たちとの交流を中心に、ささやかな日常を温かく描いている。特に事件があるわけでもなく、穏やかそのものである。

それだけ聞くと退屈な映画だと思われるかもしれない。では何がこの作品の良いところかと聞かれると、様々ある中でもやはり世之介の人柄を真っ先に挙げる必要がある。こんなに自然に誰からも愛される人は、現実にいるようでいない。
どこか頼りなく、オシャレでもない。お人好しだけど図々しくて、年上の女性に一目惚れしてホイホイついていくような、どちらかと言えばダサい性格なのに、なぜか憎めない。むしろ魅力を感じてしまう。それは、世之介に打算的な考えが一切ないからだと思う。

だいたいの人は「夢」とか「人生」を深く考えて、将来への悩みを抱えている。でも、世之介は「今」しか見ていない。今の自分に常に正直なのだ。だからナチュラルに優しく、ナチュラルに毎日を楽しんでいる。そんな姿が眩しくて、魅力に感じてしまうのだろう。願わくば世之介になりたい人生だった。

そんな世之介が過ごす1年間を2時間40分に凝縮したのがこの映画である。そう考えると、もっと長く世之介を観たいと思うのは僕だけだろうか。
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