櫻イミト

三文オペラの櫻イミトのレビュー・感想・評価

三文オペラ(1930年製作の映画)
3.0
サイレントの名作「パンドラの箱」(1929)のパプスト監督が、翌年に手掛けたトーキー最初期のミュージカル。ドイツの劇作家ブレヒトの傑作戯曲(舞台初演1928)を映画化。

1900年頃のロンドンの貧民街ソーホー。ギャング王・匕首(あいくち)メッキーは、ポリーという娘に一目惚れし強引に結婚式をあげる。しかし実はポリーは敵対する乞食の首領ピーチャムの娘だった。悪徳警察を巻き込んで両者の遺恨が深まる中、英国をあげての催し”聖十字架祭の日”が迫っていた。。。

社会の闇を生きる人間たちを主役に金が万能だと謳いあげ、資本主義社会の腐敗を皮肉を込めて炙り出している。暗黒街を再現するアナクロな美術は非常に良い雰囲気で、クライマックスの乞食300人の行進も印象的だ。乞食がいかに憐れみを感じさせるかの指導シーンも面白かった。しかしトーキー最初期のためか演出、編集共にスムーズさに欠け、説明不足なところも目立ち、映画に入り込めなかった。

それでも、あまりにも有名な「三文オペラ」に初めて接したので有意義だった。この機会に原作戯曲を調べてみたら本作とは終盤が違っていた。大まかな主旨は変わらないが、個人的には原作の方が好み。
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