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ヴァージン・スーサイズのAZのレビュー・感想・評価

ヴァージン・スーサイズ(1999年製作の映画)
3.7
美しく、幸せそうな少女達。その可愛い姿は男の子達も無視できない。だが、彼女達が抱えるものは誰も理解することができない。

思春期の若者達が抱える複雑で理解し難い感情や行動を、回想形式で描かれた作品。人によってこの世界の見え方は違う。そういったものを環世界と呼ぶが、その視点でこの映画を見ると理解度が上がると思う。

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人は儚いものや謎めいたものに惹かれる。彼女達から漂う魅力的(魅惑的)なもの。他の子達とは違うその姿は、どこか大人びている。そんな彼女達に恋心を抱く男の子達。

彼女達から漂う人とは違う何かは、おそらく彼女達から見えている世界によるもの。過保護の親により、世界と遮断された少女達は、彼女達だけの世界を強く構築してしまったのだと思う。それが、悲劇へと繋がっていく。

姉妹の仲が良かったのがポイントだったかなと思う。彼女達の中で世界が構築されすぎて、外部との関係を作る必要がなくなってしまったのでは。つまり内輪で世界が終わってしまった。それは世界に飽きたり生きる意味って本当にあるのだろうかというの負の思想に繋がる。

世界を小さく捉えてしまうことは危うい。この世界が一生続くような錯覚を覚えてしまう。それならばもうこの世からさってしまおうという気持ち。それが彼女達を死に追いやったのだと思う。

彼女たちは死を悪いもの、怖いものとして捉えていない感じがした。だから不気味に見えてくる。あまりこんな捉え方は良くないと思うが、宗教(特に新興宗教、カルト教)と同じ雰囲気を感じた。その世界の中では死を肯定的に捉える感じ。

外の世界と遮断された助けを求める少女達。ただ、正直期待はしていなかったのではと思う。もうこの世界に飽きてしまったような、その中での暇つぶしのように見える。

男の子と関係をもってみてもそれは変わらなかった。それは関わる男達が薄っぺらい子ばかりだったのも原因だと思う。やっぱりこの世界って大したことないのだと。

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若かりしキルスティン・ダンスト。可愛いさの中に潜む危うい魅力。とにかく姉妹を輝いてみせることで、その後の落差強くなる。

普通そうに見える人が死を選ぶとき、なぜこんなにも怖く感じるのか。それは、人間が自分の理解を越えたものに恐怖を覚えるからだろう。

ただ、作品としては心地よさも感じる不思議な作品だった。
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