さすらいの用心棒

日本橋のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

日本橋(1956年製作の映画)
3.9
文豪・泉鏡花の戯曲を市川崑が映画化。

市川崑にとっては初のカラー作品。泉鏡花の世界を醸し出すために一切の小道具に泥絵具を塗っているなどの張り切りが伺える抑えた色彩の美しさ。
原作は未読だが、とにかく名ゼリフの多さに驚かされる。和田夏十さんの脚本や、どんな端役でも大切にする市川崑の行き届いた演出にもうならされる。特に船越英二が演じる居丈高な官憲の使い方が、なかなか粋でニクイ。
監督自身は後から振り返って「ちょっと混沌とした作品」と評しており、夏十さんも井手俊郎のススメがなければ脚本など書けなかったと言っているが、物語に漂う哀愁、セリフの切れの良さ、画の美しさ、淡島千景、山本富士子、若尾文子ら女優陣の艶やかさにうっとりしてしまう。”もののあわれ”を映像として残すことができた非常に日本的な映画。