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春にして君を想う/ミッシング・エンジェルのnozomiのレビュー・感想・評価

4.0

妻に先立たれ、孤独になった老人・ゲイリは、自らの手で愛犬を処分し、思い出の写真を燃やし、荷物をまとめ、アイルランドの僻地にある家を出た。

向かったのは娘一家が暮らす、首都のレイキャビーク。

しかし孫娘と相容れず、ゲイリは娘に連れられて老人ホームに入ることに。

そこでゲイリは幼馴染みの女性・ステラと再会する。ステラは故郷へ帰ることを望んでいた。二人は老人ホームを抜け出し、ジープを盗み、人生の最後の旅へ出かける。

「コールド・フィーバー」などの作品の監督をつとめたフリドリック・トール・フリドリクソンによる、文明化社会や商業化社会の中で居場所をなくした老人の逃避行を描いた作品。

「春にして君を想う」という邦題に惹かれて観たけれど、内容自体は春っぽくは無いです。

人間の手が加わった自然の悲惨な様子も映し出しているけれど、アイルランドの草花の広がる草原、広い海…、映し出される風景がとても美しいと思った。

私の勝手な解釈だけれども、この作品は「生」から「死」に向かう旅を描いているのだと思う。

原題は「Börn náttúrunnar」。直訳すると「自然の子供達」という意味。自然の中に生まれ、また自然の中に帰っていく。それが本当の帰郷なのかもしれない。不安はあれども、天使がその肩に触れたなら、もう大丈夫。あのオマージュはとても美しかったです(というか、驚きました)。
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