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心と体とのnozomiのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
3.8

同じ夢を見る男女の物語。

ハンガリーの首都ブダペストの郊外にある食肉工場で、産休の職員の代わりに派遣された女性ラーツ・マーリア。彼女はコミュニケーションが苦手で職場に馴染めずにいた。

中年男性のエンドレは財務部長の役職ではあるが、左腕が不自由でどこか人と距離を置いている。

二人はふとしたきっかけから同じ夢の中で雌鹿と牡鹿になって過ごしていた事を知る。そこから二人の関係が変化していく。

イルディコー・エニェディによるハンガリーのドラマ映画。

不器用な二人のロマンチックで繊細な映画でした。

二人はどこか似ている。マーリアは発達障害であり、人の気持ちが分からなかったり空気を読むのが苦手でコミュニケーションが取るのが非常に難しく、エンドレは体が不自由であり、そのことが原因で人間関係は希薄だ。二人とも「不自由さ」を抱えて生きていて、そのせいで孤立している。

そんな二人が求めるものはやっぱり親密な人間関係なんだけど、特にマーリアは障害の性質上、人に触れるのが苦手だったりします。

人に触れるのは怖い、だけどもこの人と親密になりたい。監督はこのような心と体のずれを描きたかったのかな、と思いました。

舞台となった食肉工場で屠殺されていく牛と、夢の中で自由に森を駆け回る鹿との対比が素晴らしい。また鹿は性の象徴でもあるそうで、メッセージが細かい。

カメラワークも良かったです。ただちょっと残酷なシーンもあり、そこは目をつぶりました。

ラストのマーリアの笑顔が眩しいです。一番印象に残ったのはそのシーンでした。
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