ゆみモン

また逢う日までのゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

また逢う日まで(1950年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

1950年公開。
主演の岡田英次が映画化を勧めたロマン・ロランの反戦小説『ピエールとリュース』を水木洋子と八住利雄が翻案・脚色し、今井正が監督。
戦争によって引き裂かれた恋人の姿を描き、戦争の残酷さを訴えている。

戦争中の若い男女の恋愛物語…と言ってしまえばそれまでだ。あの時代に、恵まれている部類の家庭の贅沢な若者の恋愛なんて…という人もいるだろう。しかし、こんな当たり前の恋愛さえも厳しいという時代を描くことで、切ない反戦映画になっている。

主演の岡田英次と久我美子によるガラス越しのキスシーンが有名であるが、そのシーンはクライマックスではなく中盤にあっさりと登場した。その後、この二人は実際のキスを何度もしている。

【あらすじ】
昭和18年。三郎(岡田英次)と螢子(久我美子)が、はじめて逢ったのは空襲警報の鳴り渡る街の地下鉄のホームだった。もみ合う人、人、その中で押し倒された若い二人の指がふとふれあった。盲目にされている戦争の最中で、人間としての青春の、愛情の喜びを得たいと願う、美しい心のふれ合いだった。燃え上がる愛情は日に増した。だが、時は一刻の猶予もなく、戦争の遂行のために進んでいた。
三郎は母のない冷厳な法務官の息子である。兄二郎は、かつて夢多い青年であっが、今は陸軍中尉の軍服がぴったりと身についた青年将校で、三郎にとっては悲しい存在であった。長兄の一郎は戦争で死に、その妻の正子は、三郎の家では使用人のようであった。父も兄二郎もそれはあたり前だと思っていた。三郎は、この家庭、この雰囲気がたまらなかった。
それに反して、螢子の家庭は、母と二人暮らし。螢子は画家の卵として、貧しい生活のために、似顔や戦意高揚ポスター等を画いていたし、母は工場に勤め、この母と子は愛情に満ちていた。
三郎は明るい螢子と逢っている時だけが、幸福を身に感じる時だった。だが二人は、目に見えない戦の黒い手で、身動きできない状況になっていく。三郎の友人は次々と召集された。二人は追われる様な日々を過ごした。
そしてついに三郎に赤紙が来た。あと二日、螢子の描いた三郎の肖像画が、ただ一つの思い出として残る運命の日がくる。最後に逢う日、三郎の姉正子が防空訓練で倒れ、亡き一郎の子を流産した。三郎は螢子との約束の場所へ行けなかった。その頃その約束の場所で、爆弾によってふきとばされ、螢子の若い命はあっという間に散ってしまった。三郎の征く日は更に一日早まった。
昭和20年。今は亡き三郎の肖像画は黒い布でつつまれて、戦いの終わりは告げられていた。