イチロヲ

アナタハンのイチロヲのレビュー・感想・評価

アナタハン(1953年製作の映画)
4.5
サイパン北部のアナタハン島に漂着した日本兵たちが、島に定住している日本人夫妻をめぐり、骨肉の争いを繰り広げていく。終戦直後に発生した「アナタハンの女王事件」を映像化している、サスペンス・ドラマ。なお、完全な史実通りというわけではない。

戦争に狂わされた男たちが、「女」という刺激剤の投与により、さらにアッパラパーになってしまう。ハリウッド監督が手掛けているが、中身は列記とした日本映画。日本人の立ち居振る舞いや当時の倫理観が、虚飾なしに反映されている。

死の恐怖に直面したときの「性衝動の爆発力」と、男の人生を破綻させてしまう「魔性の女」の系譜がストレートに内包されている。発情した男たちに追い回されてしまう、女性視点のホラーへと転調するところが面白い。

検閲が厳しい時代の作品だが、なんとヒロイン(根岸明美)のヌードを遠目に見るカットが登場。脇の下や素足へのクロースアップが印象的であり、「終戦の真偽よりも、女を手に入れるほうが先!」に大笑いしてしまう自分がいる(本当は笑えないことだけど)。
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