人間関係を築くことができずにいる内向的な女性が、心を通わせられる大親友をつくるべく、自己の強迫観念と対峙する。今や世界中にカルト的なファン層をもつ、井口昇監督の初期作品。
清掃業に務めている主人公が、同僚の女性と親友関係を築こうとするのだが、コミュニケーション能力の乏しさが足枷となり、相手を冷淡に押し返してしまう。ところが、その相手もまた、個人的な劣等性をもっていて、ナンタラカンタラという展開。
素人に毛が生えた程度の拙さがあるけれど、ドラマの訴求力は絶品そのもの。人間のもつ「負の心理」を徹底的に抉りつつ、なおかつ愛の手を差し伸べる。井口昇流のスタイルが、すでに完成形となっている。
過去にイジメ行為にあったり、友達の数がゼロになったりして、その劣等感をいまだに抱えている人ほど、感極まるものがあるだろう。心に欠陥をもつ人間を救済してくれる、慈愛に満ちた作品。