垂直落下式サミング

モンスターズ/地球外生命体の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
地球外生命体が発見され、そのサンプルを積んだ探査機がメキシコ上空で大破してから六年後。飛び散った生命体は巨大なモンスターとなって大地を闊歩し、土壌を汚染するため、国土の半分あまりが危険地帯として隔離された。
そんななか、メキシコでスクープを狙うカメラマンが、雇い主の会社から社長令嬢を米国に無事送り届けるようにと要請される。トラブルに見回れながら、モンスターたちが棲息する未曾有の危険の中、アメリカとの国境を目指してゆくのだが…。
電車にヒッチハイクにバスを乗り継いで港までやって来て、川を渡りさらには危険なジャングルの陸路を行くロードムービーの様相。道すがら男女の心情を掘り下げていく。
オープニングとエンディングが重なる構成になっているのは、二回目で気づいた。軍用者から聴こえる鼻歌のワーグナー。これが物語の出口のなさをあらわしていて、戯曲のよう。
実は地球外生命体はほとんど登場せず、後半になって襲撃してくるまでは、ほぼ背景のような存在。モンスターの脅威はテレビやラジオから伝えられるほか、空に小さく戦闘機が飛んでいたり、電車が横転していたり、ヘリが墜落していたり。ここで、なにかがあった。なにも見たわけではないのに、この結果を作り出したものは確実にいる。それだけはわかる。
おそらく徹底されているのは、細々したディティールではなくて、巨大な世界観の構築。真実味のある状況を描くのが上手い。本当に。
田舎の子供たちがみんな防毒用のガスマスクを自前で持っている異様な光景であるとか、地元の人が有刺鉄線を洗濯物干しに使っている生々しい生活感であるとか、モンスターと戦車を描いた壁のグラフィックアートが見下ろしてくるとか。もしかしたら、この世界と地続きなのではないかと錯覚に陥るほどのリアリズム。あまりにも自然に、巨大生物の驚異と隣り合わせの世界の日常が描かれていた。
ギャレス・エドワーズ監督は、これのあとで巨大資本の大作に抜擢されて『ゴジラ』『ローグワン』と続けて大仕事をやりきったから、とりあえず映画の歴史には名前を刻み終わった感。もう一回こっち側に帰ってきてくれてもエエねんで。