ダニエル・シュミット監督のキャリア後期の名作。監督曰く「過去に永遠の別れを述べるための映画」。監督本人がホテル経営の一家に生まれ子供時代をホテルで過ごした、その頃体験したエピソードを映画化。
スイス山中の廃墟ホテル。ここで少年時代を過ごしたひとりの男がホテル取り壊しの報せを受け過去の記憶をたどりにやってくる。ロビーや階段、長い廊下、部屋のひとつひとつを巡りながら懐かしい思い出を鮮やかに甦らせていく。。。
監督本人の思い出を反映させた物語は映像も音楽もノスタルジーに満ち満ちていて、自分自身の子供の頃の家族旅行まで思い出させてくれた。どぎついところは殆どなく、シュミット監督ならではの夢幻的な雰囲気を優しいタッチで味わえる。監督の持つ独特な世界観は今作で描かれた子供の頃のホテル暮らしで培ったとのこと。手品師のエピソードも全て実際のモデルと出来事を再現しているというから、監督の映画創作の秘密の種明かしとも言える。
少年時代の主人公の雰囲気が「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988)の主役と似ている感じで、映画のテーマにも類似性があった。本作の方がノスタルジーに徹している。
※輸入盤DVD英語字幕にて鑑賞。作品中の思い出のアイテムとしてミッキーマウスの絵本が数回紹介されるため今後の日本国内でのソフト化には支障があるのかも。