ダイヤモンド

モンスターのダイヤモンドのレビュー・感想・評価

モンスター(2003年製作の映画)
3.0
情状酌量の余地があるとはいえ、アイリーンが犯した殺害はやはり自らの死をもって贖うしかないでしょう。
でも、彼女の歩んできた人生には同情を禁じ得ない。父の自殺、レイプ、少女のころから自らのカラダを売って生活しなければならなかったことなど。

“私はダイヤの原石。彼らが私に新しい人生を与え、新たな世界がいつか必ず訪れるのだ。
長いこと そう信じていた。
頭の中で美しい夢を見ていた。
でもある日 現実に目覚めた“。

彼女にとっての現実とは_。

一般社会で底辺に位置するだけでなく、男性たちに必要とされていながらも売春婦に対する彼らの蔑視。そしてそれを重々承知していながらもその生き方から抜けられない彼女たち。“世間”に対する憎悪と、自らへの怒り。さらにこの映画では同性愛者に対する偏見もあって、最愛のセルビーとともに彼女を追い詰めてゆく。

この映画は冷酷で残虐な連続殺人犯を描くというよりも、罪を犯してはいないが同じような境遇にある女性たちの心の叫びのようなものに耳を傾けて欲しいというメッセージが感じられる。

そして触れなければならないのが主演シャーリーズ・セロンの怪演。近寄りがたいほどの美貌の持ち主である彼女が増量し、そばかすのメイクをし、さらに歯も矯正するという徹底ぶり。無論見た目だけでなく、連続殺人に至った売春婦アイリーンの、振幅の大きい不安定な内面を見事に演じ切っています。