秀ポン

(500)日のサマーの秀ポンのレビュー・感想・評価

(500)日のサマー(2009年製作の映画)
3.9
恋に恋してるトムは、森見登美彦の書く京大生の主人公みたいなメンタリティ。
『夜は短し歩けよ乙女』とかを見て「良いね〜〜☺️」となっているような人間を真正面からギチギチに詰めてくるような映画だった。
自分は「良いね〜〜☺️」となっているような人間なので、この映画にギチギチに詰められることになって、そこにはマゾヒスティックな気持ちよさがあったりした。

途中までは「正直サマーの気持ち分かるわ。恋人になったらなんだっていうんだ?その関係は別に明日も気持ちが変わらないことを保証しないだろ」とか思っていた。
トムに対して、自分勝手だし分かんない奴だなと思いながら見ていた。

しかしサマーが婚約したことを明かしたところで、「それは話が変わってくるじゃん?」となった。
サマーは最初から正直に付き合うつもりはないって言っていたのに、恋愛脳のめんどくさい主人公がそれを身勝手に解釈していたのだと思っていたけど、サマーも大概だった。

最初から正直に言っていたのかと思いきや、彼女は彼女で2人の関係にクリティカルな影響を与える情報を伏せていた。その上で(卒業を見て泣くような私の状態や願望を)察してくれないトムを諦めて去っていく。身勝手だ。

しかし、身勝手なもの同士の関係であったのならば、バランスが取れていてそれはそれで良かったねと祝福できる。


時系列シャッフルについては、めちゃくちゃ良い構成だと思うんだけど、シークエンスの配置の意図が汲みづらい箇所、というか、他の順序を捨ててこの順序を選んだ理由が分からない箇所もあって、配置の順序が映画の印象に与えている影響が気になる。

順序が印象に与える影響の例として

IKEAで家族ごっこを仕掛けるもののスルーされる悲しい500日後半

家族ごっこで楽しむ500日前半

とかは配置がうめーなと思った。この順序が逆だったら、500日前半の家族ごっこの痛々しさがここまで強調されてはいなかったと思う。

──その他、細かな感想。

初手で付き合うつもりはないっていうサマーに好感。

交互に卑語を言い合い、ボリュームを上げてくチキンレース、高校の頃やってた気する。

画面を2分割して、左の理想と右の現実を並走させていくシークエンス。ドチャクソに良い。

会社で爆発する様すら自己陶酔的で痛々しい。
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