“微笑う銀河系”三部作から10年以上のブランク(その間はTVドキュメンタリーの仕事をしていたという)を経た個人映画・エッセイ映画。歌篇『夢走る』、句篇『一本勝負の螽斯』、詩篇『ジョーの詩が聞こえる』の3作からなるオムニバスで、『夢走る』の制作後に亡くなった日大映研・VAN映画科学研究所のメンバー城之内元晴を追悼する作品。幕間では金井監督が城之内への思いを語り、『ジョーの詩が聞こえる』では彼の実験映画『新宿ステーション』が引用される。その『新宿ステーション』は、映写される安保闘争の映像を浴びながら城之内自身が詩を朗読するという作品らしいのだが、『王国』でも見せた彼の朗々とした声が金井邸の庭を駆け巡り、時間・季節が移ろっていく。『時が乱吹く』全体の中でも抜きん出て素晴らしいシークエンス。「ステーション、ステーション」の繰り返しには『ビルとテッドの地獄旅行』を思い出さずにはいられなかったが。最後には喪服姿の金井監督が『新宿ステーション』の映像を顔面に浴びながら、城之内の詩(or死)にアンサーをする。その真摯さと熱っぽさにすごく感動させられるのだった。被写体としてもかなり魅力的な金井監督。素敵な作品でした。

僕にはまだこの作品にコメントすることはできない。

金井勝の自主映画。16ミリ、64分。かない勝丸プロダクションの「歌・句・詩シネマ」。2篇の短歌、2編の俳句篇、1篇の詩で構成した、趣味の世界。
中野武蔵野ホールにて