ちろる

仕立て屋の恋のちろるのレビュー・感想・評価

仕立て屋の恋(1989年製作の映画)
4.2
なにもかもがちぐはぐで、最初からボタンを掛け違えているから息が苦しくなるほど全ての想いが一方通行なのが辛かった。
登場人物が皆罪を背負っているのに、それがまるでら間違ってないとでも思い込んでいるようにしか見えない滑稽さがこの物語に全体に溢れている。
愛や恋の形に正解はないのだから、幸せだと思えた瞬間があるのであればいい。
愛や恋で一番避けたいのは後悔するということなのだから、この仕立て屋の生き方は虚しいわけではないと思いたい。
「ただ、死ぬほど切ないだけだ」

同監督の「髪結いの亭主」は少し微睡みの中のお伽話のような印象を受けたので、切なくも幸せな気分で観ることができたのに、これははじめから最後まで不穏な空気に押しつぶされそうになってしまう。
これまたその不穏な想いにマイケル ナイマンの調べがしっくりとハマっていて、そのおかげで美しい話ではないはずなのにとても上品で重厚感のある作品に仕上げてしまうから素晴らしい。
「鑑定士と顔のない依頼人」とも少し近い印象を受けるお話でした。
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