一人旅

イルカの日の一人旅のレビュー・感想・評価

イルカの日(1973年製作の映画)
4.0
マイク・ニコルズ監督作。

フランスの作家:ロベール・メルルによる1967年発表のSFサスペンス小説「イルカの日」をマイク・ニコルズ監督が映画化した作品で、名優:ジョージ・C・スコットがイルカ研究に人生を捧げる学者を力演しています。

イルカとのコミュニケーションを研究している海洋動物学者が、知能の高いイルカを利用して大統領暗殺を企てている財団の陰謀に対峙していく様子を描いたサスペンスで、人間の言葉を理解し簡単な会話ができるようになったイルカを巡って、主人公を含めイルカ研究所のスタッフvs研究所に資金を提供している財団の悪漢達の攻防を描いています。

人間と会話ができる高い知能を誇るイルカを使って大統領暗殺を企てる―というサスペンスは少々飛躍的で現実味のないお話ではありますが、かと言ってギャグに陥ることなく真面目なサスペンスを実現しています。

健気なイルカを犯罪のために悪用する人間のエゴに嫌気が差しますが、本作は、主人公の海洋動物学者と“アルファ”と名付けられたイルカの種の違いを超越した信頼と絆をテーマとした作品となっていて、大事なイルカの命を守るための苦渋の決断が動物愛護の精神と別れの切なさに満ちた余韻を残しています。

そして、研究所で飼育されている2頭のイルカ(“アルファ”と“ベータ”)の円らな瞳と可愛らしい挙動に癒されっぱなしの動物愛玩映画として優れた佳作で、ジョージ・C・スコットのしゃがれた低音ボイスを聴き取れるイルカの頭脳は地味に凄いと思います(イルカの声は流石に人間による吹き替えですが…)。
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