morio

灼熱の魂のmorioのレビュー・感想・評価

灼熱の魂(2010年製作の映画)
4.1
ドゥニ・ヴィルヌーヴの2010年の映画。「メッセージ」「ブレードランナー2049」よりも前に、こんなにも凄まじい映画を作っていたなんて知りませんでした。圧倒的な映像の画力と、主人公の深い想いが重すぎてまだ受け止め切れていない。

感動とも胸糞とも違う。でもこの作品は、多くの人が観るべき作品だと強く感じました。

“お母さん、あなたが生き続けた理由を教えて下さい”

ジャケ写に書かれたリード文。主人公の双子、ジャンヌとシモンのお母さんがナワル。彼らの母親ナワルの死を受け、媒介人から受け取った遺言状の指示に従い、彼らの父と兄を探すためにレバノンへ旅立つ。そこで知ることになる驚愕の事実とは?そして母が生き続けた理由とは?がストーリーとなります。

(※以下、ネタバレ有り!!)









基本的に辛い映画です🥲中東の宗教をめぐる内戦では辛い描写は多いし、容赦なく人が殺されていくし。バスの焼き討ちでナワル以外の乗客が皆殺しにあったシーンは特に酷かった。(あの時の炎が彼女の「灼熱の魂」となっていく🔥)

でもね、胸糞とかトラウマ級とか安易に言ってはいけない作品だと僕は思うんです。最後に読まれる“兄宛の遺言”に書かれた言葉があまりに強いから。。



彼女が生き続けた理由、それは
「生き別れて、手放してしまった息子を必ず探し出す」
という約束を果たすためでした。

ナワルと生き別れた息子はカナダで再会を果たします。でもこの作品はそれを美談にはしません。運命のいたずらというにはあまりにも残酷な事実。。

何と!死ぬ思いで探し出した息子が、15年間牢獄で拷問を受け続けた最も憎むべき相手だったのです(主人公の二人は実の母親をレイプして生まれた兄と母との間の子供だったという事実!)



それでも彼女は兄(息子)宛の遺言にはこう書くのです。「15年間もの長い間、拷問されていたとしても、息子として愛している」と。このことばが、凄まじいと思うのです。この感情が正しいか分からないし、理解できない人もいると思う。

それでも、憎しみを上回る母の愛、人を愛するということの深さが伝わってきて、感動ではないけれど「哀しい愛」みたいなモノがじわじわ心の底に染みて来る感じがしました。



改めてヴィルヌーヴ監督は脚本が上手いと思う。最後の謎解きのシークエンスは一気に惹き込まれてしまった!

あと、劇伴も良かった♪冒頭の孤児となった息子が丸刈りにされるシーン。カメラをにらみつける時のロックな音楽。片や、エンドロール前のラストにかかるのは悲しい讃美歌のようなクラシカルな曲。適材適所に哀しみを表現した劇伴が素晴らしかったと思います。

物語を振り返ると辛い。
でも、数奇な運命だけれども、様々な思いを経て生き延びた主人公二人には(フィクションではあるけれど)母の強い思いを受け継ぎ、力強く生き抜いていって欲しいと思ったᕦ( ˘ᴗ˘ )ᕤ

そして、少しでも幸せな人生を送って行って欲しいなあ
✨✨✨本当に。
morio

morio