風の旅人

灼熱の魂の風の旅人のレビュー・感想・評価

灼熱の魂(2010年製作の映画)
4.0
現代の神話。
母ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)の遺言により、公証人ジャン・ルベル(レミー・ジラール)から、姉ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)には父に宛てた手紙、弟シモン(マキシム・ゴーデット)には兄に宛てた手紙が渡される。
父と兄の存在を認めないシモンに対し、ジャンヌは母のルーツを探す旅に出ることを決意する。
それは「純粋数学」にも似た答えのない問いを導くことになる。

1+1=1

イスラム教もキリスト教も元はユダヤ教から生まれた。
信仰の対象は同じ神である。
にも関わらず(だからこそ)、「憎しみの連鎖」を断ち切れずにいる。
ヴィルヌーヴはナワル・マルワンを「母なる神」に見立て、「憎しみ」を「愛」で包むことによって「赦し」を与えた。
物語はどこから始めるかによって、別の様相を呈する。
例えばアブ・タレクを主人公にすれば、それは「オイディプス」的な悲劇の物語になるだろう。
ヴィルヌーヴの映画はヘプタポッドの文字のように「閉じない円環」を形成する。
終わりは新たな物語の始まりであり、我々は映画の中で提示された問いをリレー(継承)される。
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