Jimmy

冬の光のJimmyのレビュー・感想・評価

冬の光(1962年製作の映画)
4.0
「イングマール・ベルイマン監督 ≪神の沈黙≫三部作 ~その2~」と位置付けられている『冬の光』は、これまたベルイマン監督の傑作のひとつ。

この映画の原題は『聖餐式出席者たち』であるが、ベルイマンが「この作品で最も苦労したのは光線の扱い方だ」と話しているように、邦題の『冬の光』は非常に良いタイトルであると思う。

冒頭と終盤で教会牧師の姿を見る印象が、崇高感から俗世的にガラリと一変してしまうのは、途中の物語を知る/知らないの違いからだが、牧師自身が「神を信じていない」というのを見てしまうと牧師を見る目も変わってしまう。

このあたりが、この映画が「教会での物語」→「教会の外の物語」→「教会」について上手く描写して上手く語っている証明ではなかろうか。素晴らしきベルイマンの手腕。

教会の牧師室で、牧師トーマス(グンナル・ビョーンストランド)に向って彼を慕うマッタ(イングリッド・チューリン)が、「どうしたの?トーマス」と尋ねるとトーマスは「神の沈黙だ」と応えるがマッタは「神の沈黙なんてバカバカしい。もともと神なんて居やしないのに…」という件では、マッタが神の不在を主張しているように見える。

マッタがトーマスに宛てた告白手紙を、トーマスが読むシーンでは、「トーマスが手紙を読む場面」→「マッタが正面向いて手紙内容を語る場面」→「手紙内容が過去の出来事(包帯を外す件)に至っては、更に過去の映像」となるあたりの「入れ子的な構造」が面白い。

キリが無く素晴らしい物語・映像で構成されたイングマール・ベルイマン監督の傑作である。
Jimmy

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