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冬の光のleylaのレビュー・感想・評価

冬の光(1962年製作の映画)
4.4
私は性格が悪いからか、すごく楽しかった!
これはベルイマンの父への復讐か何かでしょって思えてしまった。

妻に先立たれたことで信仰心を失って悩む牧師の姿を通し、「神の沈黙」をストレートに表現している。牧師が追い込まれるほど映画として面白い。

ベルイマン、連投します。スルーしてください。

👇以下、ネタバレ含みます⚠️











冒頭から信仰心の薄そうな村人たちの形ばかりの礼拝を10分以上にわたり映す。無意味な礼拝。

中国が核爆弾を持つというニュースを見てから夫がふさぎこんでいると漁師の妻から相談されるが、牧師はろくな回答もできず、やがてその夫が自殺する。「神よ、なぜお見捨てに」の言葉が虚しい。

言いよる女性マッタに「愛していない」と非道な態度をとる牧師。聖職者だって人間だもんと開き直ってる感じが人間臭い。マッタ役のイングリッド・チューリンが野暮ったくてよかったです。

オルガン弾きの男が俗世間の代表のような存在で、彼が映ると神聖な画面の均衡が崩れる感じがして面白い。

首が動かない男(いわゆる、せむし男)が、イエスの受難の話をするシーンが印象深かった。そういう解釈もあるのか。
「十字架でイエスが苦痛にうめきながら“わが神よ、なぜ私をお見捨てになったのか”とお叫びになる。死を前にしてイエスは神に疑いを抱いた。何よりも辛かったはずです、神の沈黙が…」
キリストも牧師も一人の孤独な人間なのだとその男が言っているように思えた。

弱くて正直者でダメダメな牧師を嫌いにはなれず、ラストは切なくなってしまった。彼はこうして、神の不在を感じながら牧師という仮面を被って生きていくのか…拷問のような人生だな。たった86分で何て奥深いんだろ。

ベルイマンが哀れな牧師に父を反映している。それが父への復讐に思えて仕方ない。

ジャケ写のピカーン✴︎とした光の演出をはじめ、冬の寒々しい風景、教会の窓から差す光、光の魔術師ニクヴィストが撮るとすべてが神々しい。
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