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グラン・ブルー完全版 -デジタル・レストア・バージョン-のSIのレビュー・感想・評価

5.0
2024.3.10
自宅にて鑑賞

小さい頃に父が水死した天才ダイバーは、幼馴染の潜水世界王者に誘われ潜水大会に参加する。主人公を好きなアメリカ人女性との三角関係もありつつ二人は切磋琢磨。しかし幼馴染は主人公の打ち立てた深度の記録に挑戦し水死。彼女は妊娠までしていたが、主人公は彼を追って水死する。

傑作。
15年ぶりに観たがやはり良かった。

ジャンルは三角関係に見せかけたブロマンスであり、テーマは「タナトス=死の誘惑」。
二人は互いが互いにみている景色に追いつくべく、肉体の限界に迫りながら切磋琢磨する。海にどこまでも深く潜れる二人だからこそ、通じ合う関係。特にエンゾが死ぬ時に言う言葉、「俺も海底が良い」という台詞は深い愛に満ちている。

ジャック・マイヨールは小さい頃に父親が目の前で死亡し、「死」というものに常に考えを巡らせていたはずだ。「海底はつらい。陸に上がる理由がない」という言葉は非常に鬱的だ。そして死の誘惑が海という具体的イメージを持って観客にも迫ってくる。死ぬことの気持ちよさ=タナトスをこの映画はあまりに描きすぎている。
この作品はバッドエンドだが、ラストのカタルシスは抜群にある。観客はいつの間にかエンゾを追ってジャックが心中することを望んでしまっている。危険すぎる映画。

映像がとにかく素晴らしい。ギリシャ、タオルミーナ、コートダジュール、ペルー…海とイルカが主役の映画。イルカの調教もよくやったなと。そしてジャックがイルカを見つめる視線はあまりに愛に溢れている。

傑作。
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