当時は、キャストもスタッフも「マトリックス」とのつながりを意識して劇場で観ました。なかなか面白いので、DVDでもう1回観ようと思いながら、17年以上たってしまいました。
近未来を舞台にしつつも、SFっぽい表現やVFXを多用した派手なアクションシーンがほとんどないので、2006年の作品でも古びていない映像です。ただ、演出のテンポがせわしなく、原作の要素を132分につめ込んだ印象が否めません。
タイトルロールの“V”が仮面の(匿名性のある)キャラクターなので、もっぱらイヴィーの成長を描いた物語という印象です。彼女を演じたナタリー・ポートマンは、「スター・ウォーズ」シリーズを終えたばかりで、大人の女性をリアルに演じるタイミングだったのかもしれません。長髪をバリカンで刈られるシーンもあって、かなり気合を感じられますが、あくまで“V”に導かれる役柄なので、主体性のあるキャラクターではありませんでした。“V”が復讐と革命を遂げようとするクライマックスで、彼女の活躍を強調する演出があってもよかったです。
これほど強権的な独裁国家なら、一夜の革命で組織体質が転換するようにも思えません。国会議事堂を破壊する行為は、あくまで“象徴”(外観的にはテロ)でしかなく、民衆を蜂起させることを狙ったもののはずです。旧態依然のファシズム的な思想をもった為政者を一掃するには時間がかかります。この物語は、そうした権力に抗うイヴィーの闘いの序章を描いたものなのかもしれません。エンドクレジットでThe Rolling Stonesの“Street Fighting Man”が使用されることも象徴的です。
アメリカが内戦で崩壊し、イギリスがロ〇アのような独裁国家になっているなんて、なんとなく現代の政治的な傾向を預言していたかのような設定も興味深いです。あくまで内政を描いた物語でしたが、この世界の国際情勢や国家間の紛争状態はどうなってしまっているんだろうか…そんなネガティブなイメージも妄想しました。なかなかいいタイミングで観たのかもしれません。