イチロヲ

女衒 ZEGENのイチロヲのレビュー・感想・評価

女衒 ZEGEN(1987年製作の映画)
3.5
香港の日本人娼館に感銘を受けた青年(緒形拳)が、日本政府を相手取った、娼婦の人権問題に取り組んでいく。明治~昭和初期に実在した人物・村岡伊平治を題材に扱っている、実録系ヒューマン・ドラマ。

「国は身体を張っている女郎のことをちゃんと見てやるべき!アジア全域の日本人娼館をすべて国営にするべし!」という信条を覚醒させた男の顛末記。アジア各地で大規模ロケをおこなっているので、雄大な映像世界を楽しむことができる。

主人公の女衒は、決して女性のことを蔑視しているのではない。国のために身体を売る女たちを守りたい一心で、己を信じて猪突猛進する。だが、娼婦には人権が与えられず、いつまでも「モノ扱い」のまま。時代の流れと共に、ただ忘れ去られていくのみ。

若年期から熟年期までを同じ役者が演じており、やや失敗気味だった「北斎漫画」の手法を、ある程度ブラッシュアップさせることに成功している。含蓄のある台詞まわしとカメラの存在を消し去る演出力にも、円熟味を感じる。
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