えにし

夜のえにしのレビュー・感想・評価

(1961年製作の映画)
4.3
大富豪の豪邸での夜は、本来このうえなく刹那的に過ぎ去っていくべきものであるはずなのに、まるでその場所でだけはおそろしくゆっくりと、あるいはまるきり止まってしまったかのような時間の流れが、そこには映し出されていた。「もうあなたを愛していないの。夫を愛していない妻なんて死ぬべきよ」と言う女から滲む虚無と諦念。それに対して「愛しているから死にたくなるんだろ」と返す男が見せる不遜と無理解。誰かを愛するということは、その人を傷つけたり、傷つけたことで自分が傷つくことを覚悟することだ。愛に対するふたりの認識の齟齬は、取り返しのつかない場所まで到達してしまっていた。初アントニオーニだったけど、めちゃくちゃ好きなやつだった。
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