SPNminaco

夜のSPNminacoのレビュー・感想・評価

(1961年製作の映画)
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治る見込みのない友人を見舞う作家とその妻。その後妻は、労働者の団地が並ぶ郊外を一人彷徨う。泣く子供、喧嘩する若者。都会のアパートで妻を待つ夫。やがて出かけた夜のパーティでも一人浮いている妻、若い女に出会って心奪われる夫。
夜と昼、白と黒に分かれた世界。労働者たちは小さな手製ロケットを打ち上げた空を見上げ、競走馬を見物する富豪たちは馬上から見下ろされ、希望がないと嘆く。すべては虚無と倦怠に覆われている。三角関係のメロドラマですらない、夫婦は互いの虚無から逃れられない。生きていても無、死んでも無。窓から見下ろすオープニングから、二重映しとなる屋敷のガラス窓、土砂降りの中人影が滲む車の窓。触れれば遠ざかり、見つめ合っても届かない。時は「暗黒の時代」、「苦しみは去り、無が始まる」…さすが愛の不毛といえばアントニオーニ。
何をしても様になりつつ鈍感な伊達男マストロヤンニ。漠然とした不安に身を委ねるジャンヌ・モロー。そしてシャープでソリッドな黒髪モニカ・ヴィッティ。それぞれの立ち姿、黒いドレスのシルエットがなんとスタイリッシュな絵になること!ゴルフ場ほどの広さに池みたいなプール、ブランコ、バンド、市松模様の床を使ったゲーム…富豪の邸宅で夜通し繰り広げられる遊びは、怠惰で享楽的で刹那的なブルジョワのパーティ場面として完璧だわ。
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