クレミ

こわれゆく女のクレミのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
4.8
徐々におかしくなっていく妻と、それを受け止めようとする夫。2人の間にあるのは間違いなく「愛」なんだけれど、夫婦、家族、仕事、学校、近所付き合い、病院、男として、女として生きること。様々な環境があって、生き方があって、それらが疎外と不協和音を生み出していく。それでも2人は2人の世界でしか生きることはできないし、歪なように見えて、それって実はめちゃくちゃ幸せなことなんじゃないかとさえ思えてくる。「ただ愛するがままに生き続ける」っていう歪んだ形を、至極普通の日常の中に押し込めて淡々と、しかし美しく描き切ってしまうカサヴェテスのセンスと鋭い目線が光る。「チャイニーズ・ブッキー」でも感じたけど、何故かこの現実世界のどこかで起こっていることなんじゃないかと思えてしまう生々しさが素敵。子供たちがとても良い子で、それが余計に辛かったり。
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