日本映画史上空前絶後のカルト超大作、天才だからこそ、東宝50周年記念大作だからこそ出来た、とてつもない作品です。
私は日本映画史上最高の脚本家は橋本忍さんだと思っています。
『羅生門』『切腹』『砂の器』は映画の語り口を進化させたと思いますし、他にも名作ばかり。
回想を解説ではなく、キャラクターの心境を変化させていく物語の語り方は素晴らしいです。
本作は橋本プロダクション第3作、東宝の創立50周年記念大作として満を辞して、原作脚本監督で挑んでいきます。
東宝は1980年に黒澤明監督『影武者』を大当たりさせ、おそらくそれを超える超大作を狙ったのでしょう。
橋本忍さんに白羽の矢が立つのも、ずっと黒澤明監督と仕事をしてきたのですから、納得です。
ただ、内容は衝撃的です。
愛犬を殺された主人公が仇をうつため、戦国時代や宇宙まで登場する、一大叙事詩として、人間は何故走るのか?を突き詰めていきます。
回想形式で犬を殺した犯人を探すミステリーと琵琶湖の織田信長に討たれた悲劇と宇宙が一体何がどう結びついていくのか?
犬を殺す事による復讐はジョン・ウィックなどありますが、本作は足を使うため、とにかく走ります。
犯人は社会的にも成功しておりランニングもかかさないためなかなか追いつけません。
延々と続く競走、突然始まる時代劇、そして宇宙…。
この年は世界では『ET』が、日本でも『南極物語』が大ヒットした年、そこにこの映画がある奇跡。
これは観なければわからない、しかしすすめると友達をなくす危険すぎる超大作ですね。