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リバティ・バランスを射った男のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

4.1
傑作。
西部劇のように見えて西部劇ではなかった。

ジョン・ウェインが出ていてもテーマは、法治国家として民主制度を推進し権利を守る自由(liberty)を獲得すること、西部の開拓魂による自治の自由(freedom)を尊重すること。アメリカの建国を支える二つの自由について描かれている。

荒くれ者のリバティ・バランスにどう対決したら良いか。アウトローに対しても法で対決すべきと弁護士のジェームズ・スチュワート。

一方恋敵のジョン・ウェインは銃には銃しかない。法律はここでは役に立たない。保安官も誰も法的権限がないから、無法地帯ともいえて、私的制裁で解決するこの地のルールに従えという。

というのは、州にまだ至らない準州が舞台のため、自治体としての自治権が弱く、選挙権はなく、荒くれ者を裁く権限もなかった。

水や鉄道等のインフラも整備されておらず、教育制度もなく、町の登場人物たちは文盲で、新聞を読めないので、アメリカ合衆国全体がわからず、地域のことだけしか知らないことも描かれていた。

Go West.

開拓民が西を目指し、町を起こし、東で整備された制度がそれを追いかけるように西を目指す。
国が整っていくプロセスを見ているようで面白かった。

そして、西部のガンマンの代表ジョン・ウェインと、アメリカの良心と呼ばれるジェームズ・スチュワートが、それぞれのアメリカの精神を象徴させている。

発音も開けっ広げな西の話し方のジョンウェイン、東のこもったような巻き舌で早口のジェームズ・スチュワートとわかりやすい。

頭で正しいことを考える弁護士に対して、おおらかでダイナミックで人情的で臨機応変なカウボーイ。

物語は上院議員となったジェームズ・スチュワートが町に戻ってきて、昔の話を新聞記者に語ることから始まり、終わる。

西部の粋な心意気とアメリカの民主制度の目指すところがびしびし伝わってきて、非常に感動し、良い余韻が残りました。
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